8.21

俺は自分の事が嫌いだった。正確には今でも、自信を持って自分の全てを好きとは言い切れない。幾分、昔に比べたらマシになったってくらいか。 そりゃあ、もう立派な大人なんだからそんな些細な事でくよくよしてらんないってのもあるが。でも昔ほど、自分を毛嫌いする機会は少なくなったとは思う。思い返せば、キッカケをくれたのは彼の一言だった。元々俺は気弱な子供だった。気弱な自分を隠すために、人前では常に気を使った。地区長やら、学年会長やら、市の子供会議の取り纏めやら、なんでも引き受けた。常に人の気を伺っては、笑顔を作って、機嫌をとるピエロのようだった。でも家に帰れば、その仮面はすっかり剥ぎ取られる。「お前がやる事は全部ダメだ」「お前がいると家族が不幸になる」「出来損ない」実際、周りからも見透かされていたかもしれない。失敗して落ち込んだりすると、自分への自信が揺らいでは、あの人が言う通り、周りの人を不幸にしてしまうのではないかという不安に押し潰されそうになった。そうしてまた、弱い自分を隠すことに必死になっては、要領が追いつかず、失敗しては、また自信を失った。実家を飛び出して上京した後でもそれは変わらなかった。好きな人が出来ても、運良くその人と付き合えたとしても、最後は後ろめたさが上に立つ。俺と一緒にいて、本当に幸せなのか?俺と付き合う人は世界一の不幸者なのではないか?別れた方がいいんじゃないか...

7.30

休日。珈琲を淹れた。本を読んで、皿を洗って、音楽を聴く。昨日はお出掛けしたし、今日は家に篭っていよう、なんて考えていた。しかし、平日の休みに一人家で過ごすのは、思いの外、退屈だ。じゃあ人と遊ぼうかと考えても、平日に休みの都合が合う友人なんて残念ながらほとんどいない。基本的には、気楽だから、自分の好きにできるから、という単純明快な理由で一人の時間が好きなのだが、ここまで時間を持て余してしまうようなら考えようだ。唐突だが、人は多少の制約を必要とする生き物だと、俺は思っている。(どんな生き物であっても、そうかもしれない)眼前に無限に続く自由の平原が広がっていたら、誰だって最初は喜んで走り回るだろう。だが、それは枷を感じていた人が感じる埋め合わせのようなもので、きっとその空間に慣れてしまったら途方もない空虚感に見舞われてしまうのは言うまでもない。少しぶっ飛んだ極論を交えたが、要は暇なんてものも他の概念と変わらず、適度が望ましいという事だ。余裕を持て余したなら、その余裕を他者に分け合うのが一番いい。恋人でもいいし、子どもでもいい。先輩、後輩、友人なんて選択肢もあるだろう。少し脱線するが、逆に、自分に余裕がない人は子どもを作るべきでは無いと思っていたりもする。(余裕のない両親を見てきたからこその視点かもしれない)さて、そこまで考えたら、この退屈を打開する、一番いい方法はもう見えてくるだろう。ペ...

7.16

前回からしばらく空けてしまったが、近況でも。といってもここ最近は生活自体に大きな変化というものがあまりない。変化があるとすれば、仕事の方で、内容とか、量とか、立ち位置とか、そんなところだ。できる事が増え、任されることが増える度に、自由度も増すがその分、時間の制約の煩わしさと、責任と、それまでの立ち位置との乖離に少し戸惑ってしまう自分がいる。そういった気疲れを癒すために生活の安定とか、一緒に過ごす人々の選択とか、趣味への没頭とか仕事以外での時間の使い方が俺にとっては大事になってくるのだが、冒頭にも話したように、ここ最近の生活には変化がないのだ。原因ははっきりしている。保守に走っているのだ。もちろん100点とはいかない、70点から80点前後を行ったり来たりする生活を保とうとしている自分がいる。それを特段悪いとは思わないが、変化のない人間には退化しか起こらない。 20代は挑戦してなんぼだ、 30代は迷い、 40代には決断し、 50代は…                         なんて昭和の背中が語っているのを見て、やはりこのまま安定に走り続けるのは良くないのかもしれないとも思う。しかし、先人の言葉に耳を馳せるのは大事だが、当時と環境も違えば、...

6.28.3

終わってしまった。ライブもそうだが、一日が終わってしまった。あれ、今日の目標ってなんだったっけ。そうだ、嫌な過去を浄化させるんだった。なんかちっぽけな事を考えてたな。そんな事どうでもいいと思えるくらい、充実した。スッキリした。さて、帰るか。NHKホールを後にしようとしたところで、着信。「小口先輩!どこにいるんですか!」電話口の先の彼女はひどく興奮していた。「ライブやばかったです!!また語りましょうよ!!ね!!!」少しため息をついて、「はいはい、君は今どこにいるんですかー」彼女は新言語秩序のライブの際に隣の席になった年下の女の子。コミュニケーション能力がべらぼうに高い。今日も隣の席の子と友達になったらしい。無事合流して、話をしてたら、なんか懐かしいような不思議な感覚になった。こんな風に話せる仲間が昔はもっといたっけな、今度連絡してみるか。そんな事を考えているうちに駅に着いてしまった。こんな些細な繋がりが自分には丁度いい。むしろ有り難い。今日は最高の一日だったが、流石に疲れた。明日から日常に戻る。仕事も続けば、生活も続く。あぁ、きっと、自然と未来を描いている時点で、俺はあの時よりは大人になれてるんだ。そう考えると、少し自信が湧いた。「じゃあ、またね」

6.28.2

開演時間を10分ほど過ぎた。暗転。開演の喜びを表す拍手が自然と湧き上がる。その中を切り裂くように、不穏なギターが音色を奏でる。「後期衝動」amazarashiの自己紹介代わりのポエトリーリーディング。最近のライブでは「ワードプロセッサー」がその役割を担っていたが、敢えて昔の自己紹介曲を起用したところ、過去を顧みるライブなのが伺えた。「良いからお前、さっさと歌えよ、一体全体、誰だお前は」との歌詞に続き、恒例の……「未来になれなかった全ての夜に! 青森から来ました、amazarashiです!」歓声と拍手が沸き起こる。会場のボルテージが一気に高まる。息つく間もなく、一定のリズムが刻まれる。「リビングデッド」前回のコンセプトライブ「新言語秩序」のテーマソング。まさか今回のツアーでも歌われるとは思わなかった。「くそくらえ」切れた音の間から鋭く刺し込むその一言にドキッとする。彼らの覚悟が垣間見える。「死に切れなかった夜をくべろ」今回のツアーのテーマのひとつが「夜」だ。「リビングデッド」も"新言語秩序の歌"ではなく"amazarashiの歌"なんだと改めて認識させられた。続く「ヒーロー」。ベストアルバム「メッセージボトル」に収録され、当時のツアーでも盛り上がりを見せたこの楽曲が今回も前衛を飾る。疾走感のある楽曲で会場が盛り上がったところで、再び暗転。MCが挟まれる。「今日に至るまでいろいろな夜が...

6.28.1

誕生日を1週間程過ぎて、ようやく心の平静を取り戻したところだ。嬉しいような、歯痒いような、沸き立つような、狂おしいような、でもどうしてか幸せな、そんな複雑な数日だった。20歳にはこの身をどうにかせねばと思っていたのに、もうそこから3年も経ってしまった。もはや吹っ切れた頃合いかと思えば案外そうでもなく、未だに「6.21」に描いたような夜はやってくるもんで。これはもう、そういうもんなんだと受容したところ、多少は楽になったのが、ここまでくるのに何年要してんだって、思い返すと笑えるもんだ。今年の誕生日のテーマはそう。本気で吹っ切れて、笑い飛ばしてやろうってとこだ。自分の好きなものを数えて、訪ねて、ほら、悪くねえだろって自分に言い聞かせる、そんな一日。今回はその日を思い返して日記にしてみようと思う。誕生日を迎えて一番最初にした事は、日記を纏めること。そう、「6.21」だ。纏めたのは深夜0時頃だから、感覚としては前日の夜。明日にはこの負の感情を浄化させてやる、という目標設定のつもり。俯瞰するつもりで纏めていたのだが、やはり纏め終わる頃にはドッと疲れて、心が潰れるような想いに苛まれた。それだけ、爪痕が深いんだなあと思い知らされながら、眠りについた。夢を見たようだが、まったく覚えていない。相変わらず朝は顎が重い。頭も重いと思ったら雨が降っている。せっかく早起きしたのに、幸先の悪い誕生日だ、と思いな...

6.21

俺は、静かな夜が欲しかった。  喧騒で目が覚めた。 下の階からだ。 今となってはいつものことだ。 いつからなのかは忘れてしまった。 今夜はやけに喉が乾いている。  一杯だけ。 寝床から抜け出す。 階段をひとつ降りる度に罵声が大きくなる。 言葉の1つ1つが鮮明になってくる。  あんたの浮気がどうとか、 いくら貢いだとか、 前妻との間に生まれた娘が恋しいかとか、 借金まみれだとか、 こんな生活費じゃ生きていけないだとか、 早く新しい仕事を見つけろとか、 金が何より一番大事だとか、 全部投げ出して帰国してやるとか、 辛いとか、 苦しいとか、  子供なんか作らなきゃよかったとか。 気が付いた時には、一歩足が前に出ていた。 それまでの罵声が嘘かのようにピタッと止んだ。 構わずキッチンへまっすぐ向かう。 グラスを取る。 冷蔵庫を開ける。 お茶を注ぐ。 ゴクゴクと飲み干す。 お茶を元の場所に戻す。 冷蔵庫をしめる。 グラスを洗う。 そして上の階へ戻る。...

5.31

太陽が高く昇っている。クソ暑いって吐き捨てる。電車やコンビニの冷房がやけに恋しい。夏は嫌いだ。良い思い出ないし。単純に暑いし。でも夏が与えてくれる高揚感は嫌いじゃなかったりする。いや、やっぱり嫌いかも。。。今日のテーマは夏だ。日本は四季の国なんて言われるが 、正確には夏と冬の二季に なけなしの春と秋がプラスα程度に添えられているに過ぎない。夏生まれのくせに暑がりな自分としては夏が来る度に陰鬱としてそれでも青い空が好きなんだと繰り返すが、好きなアーティストはamazarashiなんて豪語してるもんだから誰も信じちゃくれない。 学生時代の夏といえばよく日焼けを作って褐色のいい好青年を演出することに成功していたのだが、今年はそうもいかないようだし、というよりお肌へのダメージが気になるし、でもUVカットクリームを塗るのは面倒だって具合で言ってることとやってることの同居はいまだに叶わない。理想を語るならば、一人でカメラとチャリを片手に島巡りをして、友達と車で海行って、山登って、浴衣を羽織って夏祭りに行って、花火に胸を打たれたような感動に触れる、そんな夏を謳歌したいところ。でも現実はそう甘くなくて、カメラとチャリは売り払ってしまったし、海や山に行く時間もお金もないし、夏祭りは仕事終わりに近所の盆踊り大会に寄って焼きそばをすする始末、感傷に浸りたくて花火ですら一人で見に行って...

5.17

多分、先週1週間は、いわゆる5月病ってやつで、今年もいつの間にか過ぎ去っていたんだが、いや、正確にはまだ拭い切れていないかもしれないが、俺の5月病は少しばかり面倒だ。もちろん気持ちは沈むし、身体は気怠いし、何かと空回りをする。そして、それを打開する事にひたすら躍起になる。食生活だとか、身辺環境だとか、生活習慣だとか、人間関係だとか、時間の使い方だとか、無駄はないか、不足はないか、思いつく限り全てを粗探しし始める。もちろん無駄を楽しむ心の余裕やゆとりや、不足を埋めようとする向上心や探究心はあるに越したことはないが、時間が進む限り、それに応じて自身も変化していく必要があると俺は思っている。だがTwitterなんかじゃ、俺みたいな人間は割と反感を買うみたいだ。だからというわけではないが、最近Twitterアカウントの運用の仕方をガラッと変えてみた。見たまんまだが、大人数を相手にやりとりするのは控える事にしたのだ。元々、俺は大人数での関わりというのが苦手で、例えば、学生時代のドッジボール大会とか、合唱祭とか、クラス単位以上での集まりって本当に苦手だったし、高校生に至っては気の合う仲間と文化祭を抜け駆けして隣町に繰り出していたような人種だ。実際Twitterだって、高校生から大学生前半にかけてはフォロー・フォロワー数が3桁行かないように調整しながらやっていたし、結果として、刺激は少なかったも...

大樹の語り草

私は何でも知っている世界の何でも知っているたとえば、私の背にもたれている彼女はクラスメイトに恋をしていることそれを伝えられないでいることたとえば、私の腰元で涼んでいる彼は余命を宣告されたばかりだと言うこと夢は叶わなかったということ彼らはとても愛らしい私より脆く、儚く、そして懸命だ私はせめて腕を伸ばして彼らを精一杯包んでやろう私は何でも知っている世界の何でも知っているたとえば、私の肩に留まった彼は生き別れの弟を探して旅をしていること弟もまた彼を探していることたとえば、私の足元で怯えている彼は母親に虐待されていたということ母親もまた夫に罵倒されていたということ彼らはとてもいじらしい私より弱く、小さく、そして愛情深い私は静かに佇んで彼らに寄り添う事しか出来ないが私は何でも知っている世界の何でも知っている私の観えている景色が私の世界の全てだから今日も誰かがここに来る私よりずっと、ずっと、可能性に満ちた者達だ

寂れた街の暮れの頃 古ぼけた田舎臭さもここまで連れあるけば 夜も日も明けないとうの昔の恋煩いも ちっぽけな罪悪感もこの景色に身を委ねれば 少しはましになるもんだ道すがら 旅人胸中を悟りながら なおも知らない振り僕は影法師になって綺麗な輪郭だけ残していこう喫茶で珈琲が薫る頃 何百回目かの名残惜しさもここまで切り捨てれば 歯牙にも掛けない深く溶け込ませた 情熱も慟哭も 一思いに飲み干して 重い腰をあげる通りすがり 旅人後悔をぶら下げながら なおも虚勢を張り弱さは影法師に託して夜の中に置いていこう四季は巡るが 人生は一方通行だどうせなら君と一緒がいいのだけれど天邪鬼な僕だから また君を置いていくのだろう当て所なく 旅人孤独とは 君の存在と紙一重だ空に滲んで消えた影法師この旅路に帰路などない

5.7

世間はGWが終わったとかどうとか。こっちは変わらない毎日を過ごしてる。いや、むしろちょっとナーバスか?どこか世間と一線を画したような感覚すらある。いや、別にサービス業ならどこも似たようなものだろうが。さて、最近元気がないのだが、最近の失敗談でも綴ることにする。ちょっとした反省文のつもり。先日、久々に車の運転をしてだな。初めて警察に御用になってしまったのだ。レンタカー返却時間がギリギリで帰宅を急いていたのもあるが、ナビの表示通りに転回した区域が転回禁止だった。初めてパトカーから、「そこの車、止まりなさい」を言われた。初体験ってワクワクするもんかと思ってたけど違ったな、あっ、、、諦観、、、。って感じ。結局、違反金6000円取られたし、予約延長で1時間分の追加料金も取られた。金欠マンにはなかなかの痛手だったし、何よりこれまでの違反0記録が潰えてしまったのが辛かった。もちろん、これで終わらないのが俺という人間で。後日、その違反金を払った日にもまた別の事件があってだな、仕事中に損失を出してしまったのだ。会計業務も慣れてきたばかりの頃合いだったのだが、この日の締めの間際、急に駆け込み客が殺到した。さっきまでの落ち着きはなんだったんだってぐらい。まだ容量が悪く、レジを回すので手一杯だったこのタイミングで事件が起きた。レジ会計中に、お客様から2万円を受け取った。間違いなく確認をした。2万円ですね。...